第1章:邂逅

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それと比べると、今の高野とJAL1404便は無傷に近かった。 いや、無傷と言っても過言ではない。 奇跡のレベルを超過した現象だった。 高野は人を探した。 遺体でもいい。 いや、不謹慎だが、高野は生きている人間よりも、遺体の方を優先的に探していた。 そちらの方が、奇跡に納得出来そうだったからだ。 だが、やはり、彼の目に人が映ることがなかった。 訳が分からなくなった高野は、急いで窓の外を睨んだ。 今、自分がJAL1404便がどの様な状態で、どこに着陸しているか確かめたかったのだ。 窓に顔をつけた彼は多少なり安堵する。 窓の外には何処かの海岸らしき砂浜。 打ち寄せて、青から白に変わる波。 そして、大勢の人間がそこで動いていたからだった。 ・・・海岸・・・不時着水したのか? ・・・そして、動き回る人の外見から察するに彼らは日本人である。 そうか、救助隊が来てくれたのだ。 高野は咄嗟に飛び上がって喜びそうになったが、どうやら様子が変だと思い直す。 外で動いている作業服姿の男たち。 それらの動きが、まるで、救助隊のそれに見えない。 彼らの動きは、機体を入念に調べ、救助隊、と言うより、事故調査に来たようだったからだ。
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