第1章:邂逅

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いやいや、そんなはずはない。 高野は首を振って、自らの思考を断ち切る。 だが、高野に話しかけてきた軍服姿の男。 よく見ると、それは見覚えがある顔だった。 実際に顔を合わせたことはない。 だが、知っている。 写真で見たことがある。 「もしかして、草鹿龍之介少将ですか?」 高野は思い切った質問をしてみることにした。 いきなりで不躾と思われるかもしれないが、彼には確証があった。 「ん?私はまだ、大佐だが・・・・・・、はて、どこかで会ったことがあったかね?」 草鹿は驚いたように目を開き、高野の顔をまじまじと見つめた。 間違いない。 この人は、真珠湾攻撃時の第一航空機動艦隊航空参謀の草鹿龍之介少将だ。 「・・・私の顔に何かついているかね?」 「いえ、何でもありません。そちらは副官の方ですか?」 高野は後ろに控えている30代後半の将校を見る。 「いや、俺は連合艦隊参謀の樋端だが」 高野は樋端を副官と勘違いした事を謝り、一度、深呼吸をする。 高鳴る鼓動を落ち着かせる。 「今は、西暦何年ですか?」 そして、核心を突く質問を投げかけた。 「おかしな事を聞くねぇ、君は。今は、昭和14年、西暦1939年の3月5日だけど?」 そう答えた草鹿の顔は、嘘をついているように見えなかった。 これは演技などではない。 高野は確信した。 自分が時空を超えて、昭和の時代にタイムスリップしてしまったことを。
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