第4章:激突

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海軍は、来る米太平洋艦隊の来襲に備える為、爆撃機の補充を急いだが、昭和14年の戦闘機不要論の撤回と、そのころから海軍が戦闘機搭乗員の育成に力を注ぎはじめたため、爆撃機搭乗員の数が全国的に不足していた。 また、他機種から爆撃機への機種転換訓練を行おうにも、クェゼリン環礁を巡る雲行きが怪しくなってきたため、第二航空艦隊は仕方なく数に余裕がある艦戦を搭載して出撃することとなったのだ。 「長官、沢村参謀の案は愚策かと存じ上げます」 宇垣は顔色一つ変えずに熟考する山本に視線を投げる。 「もう一度、よくお考え下さい、長官。我が第一艦隊は艦隊決戦の基幹を成す艦隊であり、もし、その戦力を決戦前に喪失させるようなことがあっては戦局に多大なる影響を及ぼす可能性があります。沢村参謀の意見は当然の如く却下されるべきだと小官は具申します」 そして、沢村に射るような眼差しを向けた。 「しかし、クェゼリン島が米艦隊による爆撃を受け、航空戦力を喪失してからは遅いのです。40機程度の戦闘機では複数の空母から成る爆撃隊を阻止できるとは思えませんし、B-17と交戦した彼らは、現在補給に追われています。恐らく、現在のクェゼリン島の防空能力は極めて低いと考えられます」
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