第4章:激突

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「ふむ、三和君はどう思うかね?」 三和と呼ばれた初老の大佐は、横目で黒島を一瞥してから静かに口を開いた。 「航空機の攻撃力を甘く見てはいけません。魚雷を搭載した攻撃機が30機もあれば戦艦は簡単に致命傷を負うでしょう。ですから、小官の思いますに第二十二航空隊は戦艦3隻分の価値があり、これを守ることは戦艦を3隻余分に保持することと同義である、と思われます」 「ふむ」 彼と同じ航空主兵論者の山本は小さく声を出して頷く。 「しかし、一つだけ懸念があります」 「敵の空襲により我が方の戦艦に甚大な損害が出ては、囮になった意味がない、言うことじゃな」 「それには及びません、長官」 急に、思い出したように沢村が口を挟んだ。 「どういうことじゃね、沢村君」 不意を突かれた参謀たちは、視線を慌てて彼の方に移し直す。 「少なくとも、敵航空機に我が方の戦艦が沈められるような事態は発生しないでしょう」 「ほう、根拠は?」 「これはまだ、確証が持てる事では無いので事前に報告していませんでしたが、十分な直掩機に護衛された戦艦を航空機で撃沈することは不可能に近いと考えられます。大東亜戦争史によると、もう一つの世界において我々が航行中の戦艦を航空機で撃沈した事例は緒戦の英戦艦2隻のみ、対する米軍は戦争終盤の大和型戦艦2隻のみです。これらいずれの事例にも当てはまる共通点は、戦艦側に十分な航空支援が無かったことが上げられます」
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