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当然、我々の知り得ない未来の出来事を知っているのだ。
その少年が、歴史を変えるためにこの時代にやって来た。
つまりは、今、我々が築いている歴史は、彼からすると変えなければならない歴史なのだと言うことか。
草鹿は考えた末、この少年が未来から来たと仮定することにした。
状況証拠よりこの言葉がただの狂言と判断できなかった。
なにより彼の眼が嘘を言っているように思えなかったのである。
「歴史を変える、と言ったが、君は何のために歴史を変えるのかね?この先、近い未来に何か起きるのかね?」
そして、高野の心中を探るように、瞼に力を入れる。
「近い未来ですか。・・・確かに起きますね、戦争が」
高野は飄々と澄まし顔で答える。
「戦争?支那事変のことかね?」
「支那事変?ああ、日中戦争ですね」
「未来では、そう呼ばれているのかね?」
「はい、でも、それとは規模がケタ違いに大きい戦争が起こります」
「規模がケタ違いだと?」
草鹿は怪訝そうに眉をひそめた。
今の日本は、支那事変で泥沼状態に突入しており、国家も国民も総動員しなければならない状態にあるのだ。
その上、さらに戦争が始まるとなると、結果、日本がどうなるのかは目に見えている。
「して、その戦争の名称は?」
「そうですね、太平洋戦争、大東亜戦争、色々な呼び方があります。しかし、欧州で勃発した戦争と併せて、こう呼ばれる事もありますね。・・・・・・『第二次世界大戦』と」
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