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「松永君たちをを労おう、と思うのじゃが、どう思うか?」
「・・・・・・は?」
山本の放つ言葉の意味が読み取れず、和田は困惑した表情を浮かべて思わず聞き返す。
「じゃから、松永君の第二十二航空隊を労おう、と思っているんのじゃよ」
山本が一文字一文字に力を込めてはっきりと言うと、和田はようやく合点がいった。
その意味を理解した和田は、薄らと意地悪い笑みを浮かべる。
「文面は如何いたしますか?」
そして、軽口を叩くような口調で言った。
「はは、君に任せるよ。分かっとると思うが、くれぐれも平文で頼むぞ」
「はっ!」
和田は短く返事をし、簡単に手を額に当ててから、第一艦橋から姿を消した。
「・・・・・・始まったか」
それを見届けて、沢村は誰にも聞こえないような声で小さく呟いた。
この戦争が始まって早くも3ヶ月経つが、彼はその間、後方で参謀たちと作戦を練り、歴史を変えるために様々な策を巡らせてきた。
彼らの立てた作戦を、正義と信じ、最前線で消えていく命から目をそむけて。
そして、これが本当に正しい選択だったのか、確証が持てなくなった。
これが、本当に日本を救う唯一の道なのか?
これほどの犠牲を払わなければ未来は救われないのか?いのか?
そのような疑念がいつも付きまとい、彼に苦痛を与える。
当然である。
未来の事は、常に正しい行いを取り続ける神のみぞ知る事実であるからだ。
その力は絶対であるが故に、は自分が悪だと決めつけた者に対しては容赦はしない。
「もし、神と言う存在が居るのであらば、私はどちらに属するのだろうか・・・・・・」
彼は無意識のうちに、この海戦において裁かれようとしていたのかもしれない。
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