第1章:邂逅

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そして、この大国同士が思想的に対立して、冷戦を生み出した。 冷戦はソ連の解体とともにその幕を閉じたが、朝鮮半島の分断のように、後の世界に与えた影響は大きい。 したがって、冷戦が、太平洋戦争の様が変わってしまえば、未来が大きく変化するのではないだろうか。 未来の日本が、核攻撃を受けなくて済むのではないだろうか。 「・・・・・・君、聞いてるのかね?」 「えっ、あっ、はい、何でしょうか?」 高野は周りが聞こえなくなるくらい深く考え込んでいたようだ。 草鹿の呼び掛けで、現実に戻ってくる。 「第二次世界大戦とは、どの様な戦争なのか?それは、帝国の基盤が揺るぐような大戦争なのか?」 高野はまわりに聞かれないように、と草鹿に顔を近づけ、そっと耳打ちする。 「揺らぐどころか、戦争に敗北した帝国は崩壊、日本は一時的ではありますが、米国の支配下に置かれることとなります」 「なんと・・・」 草鹿の目が一瞬で丸くなる。 それを見た高野は、うっすらと笑みを浮かべた。 「山本閣下の所に連れて行ってはくれませんか。そこでなら、詳細を含む全てをお話します」 「・・・何故、そこまで山本次官にこだわるのかね?」 草鹿は、高野の思考が理解できないようだ。 「山本閣下は、あの人は、今年の8月に連合艦隊の司令長官に任命されます。そして、山本閣下が立案した作戦によって太平洋戦争が勃発するんです。」 「なるほど、つまりは山本次官の考えを改めれば未来は変わると?」 「まぁ、少し違いますが、概ねは間違いありません」
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