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「ふぅむ・・・・・・」
草鹿は考え込む。
米国の支配下に置かれる、と言うことは、帝国はアメリカを敵に回した、と言うことだ。
今、支那事変で中国と交戦している帝国とアメリカの仲はお世辞にも良好とは言えない。
やはり、次に新たな戦争が起きた場合、帝国はアメリカと刃を交える事となる可能性が高い。
それを予言したこの少年、やはり、未来から・・・。
いや、これくらいの事なら少し考えれば誰でも想像がつくような事だ。
これが、この少年が未来から来た、という確証にはなりえない。
ならば、裏付けをするためにも、この少年の言うことを聞いて、山本次官の元に連れて行くべきなのだろうか。
そうすれば、後に勃発する世界大戦を回避、帝国の存続も可能かもしれない。
しかし、全てを鵜呑みにしても良いものなのだろうか。
もしかすると、少年が歴史を書き換えるために、その戦争に深く関わる山本次官を暗殺する可能性。
または、彼は戦後のアメリカ統治時代の日本から来たスパイで、帝国の早期滅亡を目論んでいる可能性も否めない。
考えていて馬鹿馬鹿しくなったが彼の正体はいまだ分からずじまいである。
「・・・さて、どうしたものかね」
草鹿が低いうなり声を上げ、白髪が混じりだした頭フル回転させていた時、
「草鹿大佐っ!!」草鹿は、背後から名前を呼ばれて振り返った。
20m程先の、先ほど草鹿達がこじ開けた入り口からとある作業員が顔を出す。
「どうしたのだね?」
草鹿は思考をまとめる事を放棄し、何かあったのか、と心配しながら、作業員の方に向かって足を進める。
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