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「山本閣下!!」
高野はその途端、待ってました、と言わんばかりに声を上げて、ズンズンと山本へと足を進める。
草鹿と樋端は、眉間にシワを寄せて高野の行動に注目。
何かあれば、すぐに高野を捕らえられるように身構える。
山本は、状況が分からなくて、ただ、キョトンとしていた。
「お初にお目にかかります。自分は『高野 正明』と言う者です」
そして、高野は山本の目の前で頭を垂れた。
「ほう、儂を知っとるか」
山本は、少し嬉しそうな声を出す。
「はい、それはもう、よく存じ上げております。
閣下の過去から未来まで、全て」
「・・・・・・未来・・・とな?」
綻んでいた山本の顔が、急な夕立のように曇る。
そして、その言葉の意味が理解できなかった山本は、高野の背後に立つ草鹿に目配せで助けを求めた。
草鹿は、その意をくみ取り、
「実は、この高野という少年は、この旅客機と共に未来からこの時代に来た、と申しているのです」
「未来からじゃと?」
「はい、私は時間を超えて、今から約70年後の日本から参りました」
「70年後・・・、孫の孫の世代かの?」
「はい」
「・・・・・・では、この航空機は、時を遡る機械かの?」
「・・・信じてくれるのですか?」
今度は、高野が驚く番だった。
山本が簡単に高野の存在を肯定するかのような発言をしたからだ。
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