第1章:邂逅

24/45
前へ
/280ページ
次へ
「ふむ、『大東亜戦争史』か。面白そうな本じゃの」 山本は、表紙を捲って内容に目を通し始める。 そして、険しく顔をしかめた。 「これは、どういう意味か?」 「閣下、これが日本の未来です。 日本は2年後、米英と交戦状態に陥り、そして、敗れます」 「それは真かの?」 「それを読んでいただければ、お分かりになると思います」 「・・・ふむ」 山本は小さく唸って、再びページを捲る手を速める。 草鹿と樋端、そして高野は固唾を飲んで山本の動向を見守る。 無言の時が続いた。 高野には、時が止まったかのように感じられた。 山本の手は、ページが重なる事に速度を増していき、終盤には漫画でも読むように捲っていき。 そして、深いため息と共に、動きを止めた。 「山本さん、一体、何が記されていたんですか!?」 先に耐えきれなくなったのは、草鹿だった。 身を乗り出すようにして山本に問いかける。 「そうじゃの。彼の言う通り、この国の末路じゃった。そして、幕開けじゃったな」 「第二次世界大戦、太平洋戦争とは、やはり米英との戦争だったので?」 「うむ、凄惨極める戦争じゃったよ。君も読めば分かる」 山本は呟くように言ってから、「大東亜戦争史」を草鹿に渡した。
/280ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1166人が本棚に入れています
本棚に追加