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草鹿は、渡された途端、「大東亜戦争史」を食い入るように見つめ、仕切りに眉を動かしている。
その草鹿の後ろから覗き見している樋端も、同じ様にそれの虜となっていた。
「山本閣下」
高野はそんな二人を無視して、座席に腰掛けたまま目を閉じる山本に話し掛けた。
「私は、いや、俺はこの太平洋戦争を食い止める為に、未来からやって来ました。
俺に力をお貸しくださいませんか?」
山本は少し黙り込んだ後、思い出したかのように目を開ける。
「しかし、君達の時代。つまりは、戦後じゃが、日本は驚くべき発展を遂げ、世界に誇れる国となった。
儂らが命を落としたのは無駄では無かった、と言うことじゃ。
それが本当なら、何故、君は未来を変えようとするのかの?
もし、私利私欲の為にこの時代に来た、と言うのであれば、協力はせぬぞ」
山本は少し語尾を強める。
高野は、言うべきか言わないべきか迷ったが、素直に未来を語る事にした。
「閣下、落ち着いて聞いて下さい。
今から約70年後の未来、日本は再び核攻撃を受けます。」
「・・・なんとっ」
「それは広島、長崎に投下された物の数百倍の威力を持ち、一瞬で東京の都市機能を壊滅させました」
山本は、顔から血の気が引いていくのを肌で感じた。
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