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「さて、どうしたものかの、草鹿君」
「・・・・・・あ、はい。何でしょうか?」
「大東亜戦争史」を一心不乱に見つめていた草鹿が顔を上げる。
「じゃから、高野君に協力して、歴史を書き換える事に、君は賛成かの?」
高野は息を飲んだ。
今、日本の進み行く道が決められようとしている。
樋端も「大東亜戦争史」から目を離して、固唾を飲んで草鹿の動向を伺う。
草鹿は、深く息をついてから、口を開いた。
「山本さん、私たちは帝国軍人だったはずです。軍人とは、如何なる国難からも国民を守り通す盾となるべき存在。ここで、彼の証言とこの本の存在を蔑ろにして、国の行く末を見誤れば、それこそ軍人としての名折れ、と言うものでは無いでしょうか」
草鹿の双眼が炯々と光る。
山本は、賛同者を得たと言わんばかりに満足げな顔で頷いて、
「高野君、君は海軍に入る気はないか?」
左手を鼻の頭に当てるようにして言った。
「・・・えっ、しかし、大丈夫なのですか!?」
「何がじゃ?」
山本は不思議そうに頭を捻る。
「いや、人事の問題とか色々とあるんじゃ・・・?」
「問題ないの。人事局に掛け合って特務士官位にはさせよう。
当分は、草鹿君に面倒をみてもらうのがよかろう」
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