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山本は不適に笑う。
「山本さん、それは副官にしろ、と言うことですか?」
「そうじゃが?」
「困ります。・・・」
「だからじゃろうが。君の仕事の補助は正規の副官に任しておいて、高野君とは情報の共有に努めてもらいたい」
「しかし・・・っ」
草鹿はそこまで言って口を噤んだ。
山本の顔を見て、何を言っても無駄だと悟ったからだ。
草鹿は、疲れ気味の顔を歪めて、嘆息する。
山本は、それを同意と受け取った。
「決まりじゃな」
山本はよっこらせ、と立ち上がる。
そして、高野を直視した。
「じゃが、手続きが済むまで家に来ると良い。なに、女中には遠縁の者とでも言えば良かろう。丁度、姓が『高野』じゃから問題ないだろう」
それで、高野は、今の自分には帰るべき場所がないのだ、と思い出す。
「迷惑をかけるかもしれませんが、よろしくお願いします」
今日は、頭を下げてばっかりだな、と思った。
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