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「やっぱり飛行機には違いないんだけど、こんな形見たことないねぇ……」
草鹿が訝しげに目を細め、ありとあらゆる推測を行いながら顔をしかめていると、
「草鹿大佐ではありませんか?」
不意に自分の名前が呼ばれた気がして、一旦、思考を中断させた。
首だけを捻って振り返ると、一隻の内火艇が草鹿の乗る内火艇のすぐ後ろに迫っている。
その船上に30代半ばの、一人の海軍将校が立っていた。
連合艦隊より調査に派遣された『樋端 久利雄』少佐だった。
「おお、樋端君か?久しぶりだね」
草鹿は懐かしそうに声を上げ、再開に顔を綻ばす。
草鹿と樋端は、互いに航空機を専門としている為、よく気が合い、何度か杯を交わした仲だった。
しかし、草鹿が陸海共同作戦研究委員会に、樋端が連合艦隊に身を置くようになってからは疎遠になっていたのだ。
「ご無沙汰しております」
樋端は丁寧に礼をして、草鹿の内火艇に飛び移ってくる。
「いや、しかし、これは何なんですかね?」
そして、樋端も異様としか形容出来ない航空機を眺めて、不思議そうに首を傾げた。
「昨日の夜に突然現れたらしいね。形からみて航空機だろうが、こんな機体は見たことがない」
「垂直尾翼には英語が書かれてましたが……、あんな識別記号ありましたかね?」
樋端は垂直尾翼に描かれたJALの三文字を眺めた。
「でも、翼には日の丸らしき塗装があるから国外の物じゃなさそうだ」
対照的に草鹿は、見てみろ、言わんばかりに指を指す。
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