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「なぁなぁ!ジュース買いに行こうぜー」
『あぁ、いいよ』
俺はまだ学校の構図が分かっていないため、佐藤についていく形になった。
廊下を歩いているときに、俺の足に頻繁に何かが当たるのだ。俺はそのたびに足に目をやるのだが、なにもないではないか。薄気味悪くなって、佐藤に声をかけようとしたときだ。
佐藤のベルトから、サッカーボールをいれる網袋に、野球ボールを入れてそれを器用に蹴りながら歩いていた。そしてたまに俺に当たっていたのだ。
あぁ…確信犯か…
俺はそのまま無言で、網袋を引っこ抜いた。
「あふぅ!」
野球ボールで遊びながら歩く佐藤と俺は、自販機にたどり着いた。
そこにいた人物を流し見たあと、自販機と向き合い、言葉を吐く。
『なぁ、あの人大丈夫なのかな…』
「あぁ、そめっち?」
そめっち?と首を傾げると、財布を出したままで後ろを振り返った。
そこにはドラム缶に挟まれた男性一人。ドラム缶が2つあるその隙間、10㎝あるのかというところに、挟まっているのだ。
佐藤は近くまでいき、声をかけた。
「そめっち、今日も挟まってんなぁ」
「おお、佐藤か。ん?そっちは見たことないな」
どうやら俺に話しかけているらしい。顔が挟まれ過ぎて、見えない。俺はその光景に戸惑いつつも、軽い会釈を残して挨拶した。
『木村です。』
「木村って言うのか。俺は、染川〈ソメカワ〉だ。よろしくな。ちなみに、理科担当だ。」
『教師がここでなにやってる…』
教師だとわかり、敬語になりかけたが、軽蔑の眼差しで染川をみた。
「いや、精一杯金属と戯れているのだよ。君も一緒に」
『結構です。』
俺は直ぐに離れて、自販機でジュースを買って、佐藤がいないことに気付き、振り替えると、いつ用意したのか、佐藤が同じようにドラム缶に挟まっていたのだ。
『この仕事人があ!』
俺は買った缶ジュースを投げつけた。
「「缶だけに?」」
『もういい…帰る』
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