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「いっそのこと、私のことも殺してくれれば良かったのに。」
そんな呟きは誰にも届かない。
そう、恭哉にさえ…。
どんなに悔やんだって、どんなに辛くたって、恭哉は帰ってこないとわかってる。
それでも、やっぱり思ってしまう。
あのとき、恭哉の代わりに私が殺されていたら――と
「みどり。」
いつもの声に、私は驚きもせずに振り返る。
そこにいたのは、私の親友の秋月水乃だった。
「水乃…」
「…大丈夫?なんて……大丈夫なわけないよね。」
普段しないようなとても悲しそうな顔をしていた。
「恭哉がいなくなったら……私の名前はいらないね。」
「みどり……」
「恭哉以外、呼ばないもんね…。私が名前嫌いだから呼ばないでって言ってるのに、恭哉だけは名前で呼んだ。恭哉がいなくなれば、名前がある意味なんて無くなった。」
「くら――」
「呼ばないで!!」
私の大きな声に水乃は驚いていた。
「……名前、嫌いなの。誰にも呼ばれたくない。」
私の言葉の意味を理解したのか、水乃は柔らかに笑った。
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