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それから30年以上、海外旅行なんて一度も行かないまま過ぎていった。
もちろん店が繁盛していて暇がないのも理由なんだけど。
自分のやりたい仕事を頑張っている裕一や、服飾関係の仕事に就きたいとこっそり努力している香織を見ていて、忍の夢を奪ったままだったことを思い出したんじゃないかと、忍がしみじみ言う。
「私は2人で店を繁盛させるっていう新しい夢を見つけたから、全然後悔してないんだけどね」
穏やかな笑顔が嘘じゃないことを物語っている。
「じゃあどうして?」
「あの人は一度言い出したら聞かないのよ」
嬉しそうな忍を見ていたら、香織も2人を気持ち良く送り出してあげたくなった。
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