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「はぁ?」
私は大声を出していた。その声に反応し、廊下にいた生徒達が一斉に私に振り返る。しかし巨大はんぺんには一切目を向けている様子はない。
私にしか見えていないのだろうかという異怖の念が込み上げる。私には人に見えないものが見えるなどの特殊能力はないし、何より気がふれたわけでもない。幻覚が見える薬など、関係は皆無だ。
鼓動が上がり、汗が滲んできた。私は今、とても恐ろしいものを見てしまっているのではないかと感じてきた。
自然と後退する。前に進む事、更にはその場に留まる事を、私の足は拒絶したのだ。
私は踵を返すと、右手に見える階段を駆け上がった。普段の運動不足がたたり、途端に息切れを発した。段を上がる足が震え、体力テストの踏み台昇降が苦手だった事を思い出した。
それでも私は休まずに駆け上がった。何故なら上がる先々で視線を移すと、そこには必ず巨大はんぺんが身を振るわせていたからだ。
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