へろんへろん

8/12
前へ
/142ページ
次へ
「ねえねえ」  怒り肩を叩かれる。憤怒の表情のまま、叩かれた方を見る。 「校長室って何処かなぁ。偉い人だから、高いとこにいると思ったんだけど」  満面の笑みの女の子が、対称的な面構えの私に問う。 「下」 「した?」 「下の階」 「下の階」 「校長室は下の階!」 「校長室は下の階」  何故私の言葉を反復するのだろう。苛立ちに苛立ちが重なる。  私は笑顔の女の子を置き去りにし、はんぺんを見据え再び歩き出した。すぐ傍に女の子が追歩する。 「ねえねえ」 「何?」 「校長し」 「し、た!」  私は立ち止まり、今度は女の子を見据えた。お団子頭にドアノブカバーを被せた様な、アニメや漫画の中国人の女の子がする髪型で、知らない学校の制服を着用し、私の前で輝くオーラを放たんばかりの笑顔を見せる彼女は、全く知らない顔だった。この学校の制服を着ていない所を見ると、転校生なのだろう。校長室の場所が分からないのも頷ける。
/142ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加