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「暑い……」
普段のビルに囲まれた都会と気温は変わらない。
日差しも同じ太陽から降り注いでいるはずだ。
しかしどこか暑さが違う。
都会に慣れてしまった体が拒絶反応を示しているのか、故郷を体が思い出したのか…
俺が田舎に顔を出すのはお盆と正月だけだ。しかも滞在は数時間だけ。
俺はこの夏、少し早めの帰省をした。今回は少し長い滞在の予定。
高校を卒業後、大学進学を機に家を離れ、そのまま就職。もうかれこれ7年8年故郷を離れた生活をしている。
…ガラガラ
俺は引き戸の玄関扉を開ける。
「ただいま!」
奥の扉が開き、母が覗き込むように俺を見た。
「あら、おかえり」
俺は靴を脱ぎ捨て、自分の手荷物を玄関ホールの隅に置き、そのまま母がいる居間へお土産の紙袋を片手で差し出しながら入り込んだ。
「おかん、家にいていいのか?親父は大丈夫なの?」
「1人でやる方がいいんだと、時間は沢山あるからね」
実家は小さな電気屋を営んでいる。親父が一代で築き上げた。親父も還暦を迎えた。
そして、この夏で店を閉めることにした。
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