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この夏、入社して3年が過ぎ、仕事も余裕を作れるようにやっとなってきた。
今まで寄り付かなかったのは、実家が嫌いということではない。むしろ、実家も両親も故郷も好きだ。
…ただ、それ以上に都会の暮らしや遊び、仕事に夢中だっただけだ。
俺はとり合えずソファーに腰を下ろした。
「それにしても暑いねー、お茶でも飲むかい?」
「あー」
俺は氷の入った麦茶を勢いよく飲む。
「もう1杯ちょうだい」
母が麦茶の入ったポットと自分のグラスをテーブルの上に置き、俺の隣に腰掛けた。
「それにしても、よく親父閉めるって言ったな…」
「前から山口さんに手伝ってくれって言われてたからね。歳もあるし、景気も悪くなってるし…良いうちに辞めようと思ったんでない」
母はなんかすっきりした表情でそう話した。
親父は世代的にも、地方という土地柄的にも義理人情の商売の真っ只中でやってきた。山口さんは親父より歳が1つ下で電気工事会社をやっている。昔から家族ぐるみの付き合いをしてきた。俺も好きな人だ。
昨年、息子が帰ってきて本格的に実家を継ぐことになったらしい。
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