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「いらっしゃいませ」
……優しい声。
それに、この香り。――何の匂いだろう?
こじんまりとした外観に相応しく、カウンターに4席と、2人用の円いテーブル席が3つ。
他にお客は居なかったが、1人だし……と、カウンター席に座る。
「初めてのお客様ですね」
マスターらしい若い男の人が笑顔で声をかけてきた。
……優しそうな人。
「……はい。この道、初めて通ったんです。
……可愛いお店ですね。」
白い壁紙に、テーブル等は木製の深いプラウン。
レースのカーテンが掛けられた窓辺には、小さな鉢植えが置かれている。
店内の雰囲気と、そこに満ちる優しい香り……とても落ち着く。
「ありがとうございます。
何かお飲みになりますか?」
嬉しそうに笑って、メニューを手渡してくれた。
種類別に分けてある、見やすいメニュー。
デザートの種類が豊富で驚いた。
「甘いものはお好きですか?」
そう聞かれて、じっと見すぎたかと恥ずかしくなる。
甘いものには惹かれるけど、今はそんな気分じゃない。
それよりも、入る前から気になっていたことを聞いた。
「あ、あの、……この香り。
……これは、何の香りですか?」
「紅茶の香りだと思います。
一応、紅茶専門のカフェですので」
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