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由里子さんに不満があった訳じゃない。
ただ、母と過ごした16年が無かったことにされていくような、漠然とした思いが胸の内にあって。
けれど、父と妹たちの為に、その思いを心の奥に押し込んで2人を祝福した。
誰の目にも、幸せな家庭に見えていただろう。
由里子さんは父よりも10歳ほど若く、あたしと並んでも母娘には見えない。
2人は少し年の離れた、赤ちゃんが生まれたばかりの幸せそうな夫婦。
そこにあたしが加わっても、親戚か他人にしか思われない。
由里子さんはあたしにも、母の様に接してくれた。
幼い妹たちが、産みの母と育ての母の違いを理解することは難しいだろうし、成長していく上で、由里子さんを母として慕っていくのは当然だ。
それが悪いとは思わない。
でもあたしは、命を懸けてこの子達を産んだお母さんのことを、忘れて欲しくなかった。
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