禁じられた契約

2/2
前へ
/126ページ
次へ
「いいでしょう そう致しましょう 望み叶えて差し上げましょう」 その白い手で記された 震える字の署名(サイン) 横たわり その時を待つ 凍てついたシーツの上には 悲しみも喜びもない造り変わる躰 汚れのない碧く潤んだ瞳 そこに映るすべて許されるのだろうか? 薄れていく頬の紅 鋼のように その痛みに堪え忍ぶ叫びは闇に融けて儚い 永久(とわ)に続く 生命(いのち)と引き替えに差し出すものは 胸に刻む禁じられた契約(ちぎり) 誰もそれを知らない 「どうでしょう 素晴らしいでしょう きっと気に入っていただけましょう」 その胸に今 刻印(しる)された 黒い薔薇の紋章(サイン) ぎこちなく微笑んでみる 古い鏡の向こう側には 壊れそうで透き通るような 生まれたままの肌 淡く甘い その黒髪の香り 唯ひとつ残った幼し頃の記憶 悔いる時間(とき)など許されない 虜のように その誓いを破り捨てる事を 考えてはいけない 永久(とわ)に続く 生命(いのち)を得るために差し出したもの 胸に刻む禁じられた契約(ちぎり) 戻る事はできない 薄れていく頬の紅 鋼のように その痛みに耐え忍ぶ叫びは闇に融けて儚い 永久(とわ)に続く 生命(いのち)と引き替えに差し出すものは 胸に刻む禁じられた契約(ちぎり) 誰もそれを知らない
/126ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加