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「ともあれ、逃げられない立場、帰っても特別成す事もない身の上…」
ふぅ、とため息を漏らして、いやいかんいかんと首をぶんぶんと降る。
「こんな辛気臭い顔をしていては、愛らしい姫様に失礼になるな」
窓に映る顔が余りにも困り眉にへの字口で、とてもご機嫌うるわしゅうなどとは言えない表情で、苦笑する。
しかし本音が顔に出やすい性分で、作り笑顔というのがどうも苦手だ。
「……お気に召さず、帰されでもしたら兄上姉上に一体どんな扱いを受けるやら…」
まだ一目会ってもいないのに、もう帰される事を前提に考えている情けなさ。
こんな内面をあの姫様に初対面で読み取られていたとしたら。おお怖!
挨拶代わりに顔面キックでも喰らっていたかもしれない…
しかしまだ、この時は、
“お姫様”といえば、淑やかで、女性らしく、品の高い、触れれば壊れてしまいそうな、
そんな硝子細工のような存在を思い浮かべていたのである。
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