はじまり

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「何を言う、そなたにしか務まらぬのだ。もう、そなたの他にはおらぬ」 「は、はあ…しかし私などまだまだ勉強中の身、姫様へご教授させて頂く知識に足りますでしょうか…」 「足りる」 きっぱりと、初老の執事長は言い切って続ける。 「噂は聞き及んでおるぞアルフレッド。所蔵の書物を三歳足らずの頃から読みふけっておるとか」 「え、ええまあ…当家の書庫の書物は粗方暗記していますが、そんなに大した物が揃っているわけでもありませんので」 そもそも、本ばかり読んでいたのも当主になる予定も政略結婚する予定もない末弟で、 武芸はからきしダメ。 身なりも兄君姉君に比べてパッとしなく、ハッキリ言って小馬鹿にされていた為引きこもっていただけの事。 幸い、知性に関しては兄君姉君に劣らなかったおかげでそれなりに役には立てるようになった。 将来は兄君の補佐役として、影のようにたち振る舞えればそれで良かった…はずだった。
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