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「さっそくだが、午後には顔合わせして頂きたい。
そうだな…ティータイムに甘い菓子でも頬張りながらがよろしかろう。
シェリール姫様はあれでいて甘いものには弱いでな」
あれでいて?
女性は一部の例外を除いて甘いものが好きなものだと思っていたし、選び抜かれたシェフの菓子を毎日望むままに食している姫君ならなおのことだと思うのだが。
今はこの執事長の発言の違和感にそれほど気は留めなかったが。
後になってみれば、なるほどと首をうんうん振るしかないのである。
あれでいて、
女性らしく、
可愛らしい、、、
「服装は、いかがすればよろしいですか?
まさかそのまま姫様にお会いするとは思わず、このような出で立ちなのですが」
そもそも、辺境田舎貴族の身。
一国の姫君にお目通り出来るような衣装は一枚二枚しか持っていないのだけれど。
今日着ている衣装も、兄君の借り物のそこそこ良い生地に豪華な刺繍が入った代物だが
派手な兄君なら着こなせるだろうが、地味な私にはイマイチ柄が浮いて見えてあまりよろしいと思えない。
「いや、そのままで構わんよアルフレッド。
シェリール姫様はむしろ堅苦しい雰囲気を嫌うのでな。明日からも、特に形式ばる必要はない」
「はぁ、それは助かりますが…」
「…うむ…とはいえ、上手く行けば今晩から城内で生活して頂かねばならぬ。
貴殿の城から荷物を送ってもらうにせよ、一日二日では届くまい。
明日からしばらく用に何枚か用立て致そう」
「あ、ありがとうございます」
何だか、トントン拍子に出世してしまっている気分で落ち着かない。
王宮に仕官する。しかも姫様直属。
という事がどれだけ恵まれた立場なのか、今更実感する。
「では、昼食を用意させるので一旦失礼。
何か希望があれば給仕係にお伝え下さい」
「い、いえ、とんでも。野菜も肉も基本何でも食べられますので」
好き嫌いをしたら父上と姉君にとんでもなく怒られる。
好物は皆かぶるせいで、なかなか沢山食べられなくて。
食生活は少し裕福な平民程度だったと思われる…
「ははは。面白い方ですな!では肉も野菜もたっぷりと盛るよう伝えておきます」
「は、はあ…スミマセン」
私は少食なのですが、と付け加えられる雰囲気ではなかったので、そのまま執事長の背中を見送った。
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