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「ふう……」
バタンと扉が閉まると、思わず深い溜め息が出た。
こんな高い天井、
煌びやかな装飾、
土足で踏んでも靴底を越えて柔らかさが伝わる絨毯。
それがこれからは日常となるのだ。
しかも、可愛らしい姫君の間近で。
「本当に、私なんかで良いのかな…」
正直、荷が重い。
何せ、20年生きてきて母上と姉君、城のメイド(年上の)くらいとしか女性とマトモに会話した事のない私である。
まぁ、おそらくそれも私が選ばれた理由の一つなのだろうが。
浮き名を流す男を迎え入れた時には、それが真になるかどうかは別にして、ろくでもない噂が立つのは避けられない。
王宮も基本は女中メイドで成り立つ女社会である。
女性ばかりの職場は怖い。
すぐに色恋沙汰の噂が立つ。
そしてそれが真であれ嘘であれ、面白おかしく騒ぎ立て、時に人を破滅させる。
相手が一国の姫君であれば尚更ダメージが大きい。
噂にしろ、身分賤しい男と恋仲になったなどと騒がれては、まず嫁ぎ先にソッポを向かれる。
実際、貴族の方が色恋はただれて好き勝手やっているものだが
嫁に貰うとなっては話が別。
姉君も相当にあれやこれや手を出しているが、あくまでも外には“純潔の令嬢”で通っている。
ああ、こんな風な裏を間近で知ってしまっているだけに、女性が怖いのかもしれない。私は。
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