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手が吸い込まれるように向かって古びたそれを手に取った。
そしてパラパラと軽く読み始める。
「……父さん」
本には父が書いた字が事細かに記されていた。
それは―――
「―――っ!!」
急にアルクは血相を変えて家を走って出て行った。
集会所の一室ではまだ村長と村の重鎮たちが話し合っていた。
「村の守人であったゼルムが死ぬなんて……。早急に新たな守人を見つけねば」
「ですが村長、現段階で守人になろうと言う者が――」
その時、入口の扉がバンっと開き、アルクが肩で息をする姿が現れた。
「――村長さんっ!!」
「どうした?!アルク?!そんな血相を変えて」
「お願いします!僕に……俺に父さんの仕事を継がせてください!!」
「なに?!アルクがゼルムの代わりに守人を?!」
「お願いします!」
「だが守人は命がけだぞ?ましてそなたみたいな子供が」
「覚悟は出来ています!
必ずみんなを守ります!」
「しかし……」
「お願いします!」
アルクの真っ赤な目が村長の目を真っ直ぐに見続ける。
「…………わかった。皆のもので話し合う」
「ありがとうございます!」
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