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「何?」
「みんなが言ってたけどお前これからどうすんの?」
「わかんないよ、父さんはいないし」
「そっかぁ」
アルクは立ち止まった。
「みっちゃん、ありがとう。僕はこっちだから」
「じゃあ、またあした」
「あした」
ミファラは手を大きく振る。
アルクも軽く振り返した。
家に帰ると月明かりに若干照らされながらも真っ暗な部屋がアルクを迎えた。
住み慣れている真っ暗な部屋をアルクは迷いもなく一直線に進み、引き出しからろうそくとマッチを取り出した。
そしてろうそくに火を灯す。
火によって明るくなった部屋をアルクは見回す。
だが彼の目には今にもこぼれ落ちそうな涙が溜まっていた。彼の耳にはいつもは聞こえるはずの父の声が聞こえない。
「……しっかりしなきゃ。僕は父さんの子だもん」
涙を裾でゴシゴシ拭いたアルクは、不意に父がいつも夜には着く机の上に一冊の古びた本の存在に気付いた。
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