22.潤う雨 

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「飛翔、退け。  時間がない」 突然、聴きなれた声が聴覚に届く。 「闇寿さま」 神威の後見役を務める、 従兄弟の華月の旦那。 闇寿さまの後ろには見知らぬ女性が一人。 「柊佳【とうか】殿」 闇寿さまが、その女性の名を紡ぐ。 「お二人とも、その場から後ろへ。  この場は、私がお相手致します」 凛とした口調で告げると、 その女性を取り巻く空気が瞬く間に変わっていく。 張りつめた空気は渦のように、 その女性を包み込んでいくのが感じられる。 「闇寿さま、あの方は」 「生駒家の本巫女。  蒼龍と契約せしもの」 生駒と言えば……、 風舞【かざまい】の一族。 「と言うことは、この屋敷は目に見えぬものに  何かを細工されているということですか?  俺も邸に足を踏み入れた途端に、  圧迫を受けて意識を失いました」 「この奥に華月は居る。  万葉からの情報だ。  今日、当主の儀式が行われる。  何としてでも阻止したい。  その為に、私が柊佳殿を探し出して此処に来て頂いた」 そう告げた闇寿さまと一緒に、 目の前での不可思議な時間を見届ける。 まるで何かの夢を見ているように、 風が巫女を宙へと浮かしていく。 浮遊する巫女は、そのまま指先で何かを描き出す。
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