こぼれ落ちたメロディー

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彼を初めて見たのは入学してから1ヵ月経つか経たない頃だった。丁度この時期はどのクラスのあの子が可愛いだの格好いいだの噂が飛び回る期間だ。 「A組の山田涼介!やっぱ今年の1年じゃダントツ可愛いよな!」 「いや山田くんは可愛いより格好いいんだよ!守られたいなー!」 「知念も捨てがたいけど好きな人居るらしいもんなっ…!」 楽しげに会話する名前も知らない連中の後ろを通り頷く。みなさんよくお分かりのようで。学生の大半はこういう噂話の類が大好きだ。まぁそれは僕も例外ではなく、その噂を聞きつけ面白いものみたさというか、単なる興味本位で彼を見に行ったのだ。 初めて見る彼は想像以上に綺麗で、まるで作り上げられた一つの芸術作品の様で思わず息を呑んだ。 まあ、当時の僕には入学式で一目惚れした想い人が居たのでそれこそ彼に恋をするなんて事は無かったのだが、もしも普通に出会っていたらやはり僕も少し彼に惹かれていたのでは無いかと思う。 だがら、今でもたまに彼が僕の目の前で楽しげに笑って会話しているこの状況を夢なのではないかと思う。 _
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