夏の再会プロローグ

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灼熱地獄。 今のぼくが遭っている状況の名前だ。それ以外に表現しようがない。 電車から出て、涼しい駅のなかを抜け、外に出た瞬間にぼくは暖かい歓迎を受けた。 ……熱風の。 全身から汗が吹き出してくる。腕で額を拭おうともはっきりいって意味がない。 かなり住みやすい地域で15年も過ごしてきたぼくには、拷問にも思えた。 近くの高校に入学するも、3カ月で肌に合わないと思ったぼくは、すぐに転入試験を受けた。 8月、古都。 世間一般の夏休みである。 無事に転入試験に合格したぼくは、親元を離れ、こちらの知り合いのところにお世話になることになっている。 向こうが覚えていてくれたことには正直驚いた。 快諾してくれた知り合いに感謝して、この場所を訪れたのだが…… 夏暑くて冬寒いといわれるこの地はまさに今、太陽による恵みを受けすぎていた。 ここまで暑いとは思わなかった。
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