夏の再会プロローグ

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駅の近くには大きな木がいくつも生えていた。何を狙ったものだろうか。 日陰を生み出すため? 涼しさを演出するため? 残念ながらその試みは失敗と言わざるを得ない。 なぜなら、その木からは大音量の蝉の鳴き声が大合唱を行っているからだ。 暑苦しいことこの上ない。 うるさい。 五月の蝿と書くが、今のこの気持ちは八月の蝉だ。 八月蝉い。 ぼくの気持ちは夏の暑さで蕩けてしまっている。 もう萎えているのだ。 一日目からぼくの新生活に暗雲が立ち込め始めた。 …まぁ、気の持ちようなんだけど。
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