15人が本棚に入れています
本棚に追加
只のパンチを放った。放ったハズだった。
いや、実際に俺が繰り出したのは何の変哲もない右ストレートだ。
だが、それを受けた相手は二本三本と木々を折りながら勢いよく吹っ飛び、大木に衝突する事でやっとその身の勢いを止めた。
これには、敵さんだけでなく俺も唖然とした。
「野郎!よくもやりやがったな!!」
「女だけ手に入ればいい、男の方は何かと厄介だ!殺れ!!」
と、奇想天外な俺のアクションにより、敵さんはいきり立っている様子。
冷静でない分、攻撃も読みやすくなる。
「喰らえぇぇぇぇ!!」
ほら来た。
攻撃とは呼べないくらいお粗末なのが。
「……遅い!遅すぎるッ!!」
突き出された剣を紙一重でかわし、相手の腕ごと絡めとる。
そのまま虚空に円を描く様に、相手の顎目掛けてサマーソルトを仕掛けた。
音もなく崩れ落ちる男。
これは強すぎる、そう自覚し自覚させるのにはそれほど時間を要さないだろう。
「……お前ら、一旦退くぞ!」
今まさに敵に止めを刺さんとする時、相手の頭はそう言う。
撤退を叫んだ集団の頭は、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。
ぞろぞろといなくなる集団を尻目に、1人悪態を付く俺。
「…興が削がれるって、こういうことを言うんだな」
と、どうでもいい独り言を呟いているのだった。
最初のコメントを投稿しよう!