夏山の柵

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 羽音の響く茂みが膨らむように揺れた直後、明良と優輝はうわぁと叫んで一目散に逃げ出した。  道なき道を疾走しながら、明良は自分の真横を並走する弟を見る。 「一歩も動けないんじゃなかったのか!?」 「それとこれとは話が別だろ!」 叫びながら、住吉兄弟は無我夢中で疾駆(しっく)した。ズボンの裾に泥がつこうが、顔面で蜘蛛の巣を突き破ろうが、構っている余裕はない。 「危ない! そっちはダメ!」 「え?」  唐突に、澄んだ少女の声が聞こえた。明良は一瞬声の出所を追ってよそ見をする。その瞬間、彼は木の根に足を取られ、勢いよく転倒した。 「うわっ…ぶ!」  運悪く柔らかい腐葉土の上に顔面から突っ込んで、起き上がった彼はぶるぶると首を振る。まるで犬みたいだ。
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