プロローグ

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暫しの沈黙 電話口で私は泣きじゃくっていた。 彼ならば、冷たい言葉で私を責め…今すぐに電話を切るだろうに。 昇太は、そんな彼とは違う。 何時でもどんな時でも優しくしてくれた… 「昇太…昇太が彼氏だったら良かったのに。浩ちゃんよりも先に、会いたかったな…」 淋しい時にだけ、すがり付く こんな私を煙たがらずに、優しく受け止めてくれる… そんな彼に、少しずつだか惹かれていたのは確か。 黙って私の話を聞いていた彼が 『今、何処に居るの?』 優しく声を掛けてくれた 「海が見える場所にいる…」 私は、声を振り絞って言った…… 昇太の…彼と同じ声を聞きながら 「次に生まれ変わった時は…」 逝きたかったから 『へ?』 もっと…早くに…… 「昇太の大切な人になりたいな……ごめんね…さよなら……」 家を出る時に隠し持っていた…包丁。 携帯で喋りながら、首に押し当てていた鋭利な刃を… 「浩ちゃん…さよなら…」 ブシュッッ!! その後… 直ぐに私の体は、海へと落ちて行った。 海の見える場所 私は土手に居た。 息を切らしながら走って辿り着いた場所… 愛しの彼が住む場所にも海があった。 彼に繋がる 同じ 海… 此所で命を絶ちたかったのだ。 そして私の体は… 暗い海の底へと沈んで行った…
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