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その母親に抱えられた幼子、まあつまる所、僕である。母親の背中には狼の様な魔物が付いて回る。
母親は足が縺れ、倒れる。ここがチャンスとばかりに飛びかかる魔物。
ーーそう言えば、ここで初めて出会ったのか。
舞い散る鮮血。響く獣の悲鳴。肉を切り裂く生々しい音。飛びかかった魔物は突如として現れた青年に命を奪われた。
「おい、大丈夫かいおネェちゃん。」
この場に削ぐわない青いローブ。白銀に煌く髪。紅の瞳。手には先端に翠の宝玉を拵えた杖。
ニヒルな笑みを浮かべた青年は杖を構えたまま、背後の女性へと振り返った。
ーーお師匠様だ。
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