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ある日、作業中に社長がいきなり入ってきて「ちょっと来てくれ」と事務所に呼ばれた。
事務所に親会社「コズミック電機」の中田社長が来ていたので、挨拶をしろとの事。
中田氏は50台前半だが、若く見える。一代で会社を築き上げただけに、自信に満ち溢れているように見えた。
その中田氏は社長に「息子さんって、だいぶ前に手伝いに来てた子じゃないの!?あのボーっとした奴さぁ!」と聞いた。
夏休みとかに工場を手伝っていた、僕の弟の事だった。
すると社長は
「あい(=あいつ)はワシの次男で、こい(=こいつ)は上の子や!まあ、こいもボーっとしたある(=している)けどな!!…フッ(鼻笑い)」
…何やねん! その紹介の仕方は!!
僕は怒りを堪えながら、中田氏に自己紹介した。
中田氏は、雑談の中で「こないだまで東京にいたの?住んでたのは××市?あそこは僻地だよ!俺は渋谷のど真ん中だけどね!」
と自慢げに言い放ち、近くにいた鬼塚に、
「ところでユキちゃんは東京には来ないの?来たら俺が案内したげるよ!どこ行きたい!?」
と、鬼塚と話し始めた。
社長は「もうええ!現場に戻れ」と。
何だか腑に落ちない初対面となった。
僕が中田氏と深く関わる事になるのは、まだまだ先の話になる。
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