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「紅葉(こうは)様、負傷!」
「医療班はまだか!急げ!!」
ーこれは、何だ。
街外れの森に現れたという魔獣を、直々に討伐しに行った父の帰りを待つ私の耳に、次々と飛び込む怒号。
呆然と立ち尽くす私の肩に、誰かの手が置かれた。
「……朱桜(しゅおう)…」
「紅蓮(こうれん)様、お部屋へお戻りください」
「ま、待って、父様…父様は!?」
朱桜の手から逃れ、私は屋敷の正門へ走る。
「いけません紅蓮様!!」
背中から聞こえる声を無視して、私はただ走った。
向こう側から、担架を担いで駆けて来る従者達が見える。
追い付いた朱桜に羽交い締めにされ、私はそれ以上近付く事が出来なかった。
「離して…っ、離しなさい!」
「なりません!!」
「父様っ、父様ぁ!!」
暴れる私の横を、人を乗せた担架が通る。
乗せられていたのは血塗れの―――。
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