夜は嘘をつきたがる。

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夜の冬空の下。口で煙草を銜えて、火を近づける。しかしそれを寸前でとめて、口の煙草と一緒に箱も捨てた。 それとほぼ同時に後ろから馴染みのある声をかけられた。 「出雲さん」 「なんだよ」 「それ」 「それ。じゃ分からん」 「煙草」 「ん?捨てたんだよ。禁煙中だからな」 「“禁煙中”なのに煙草持ってたら、普通は駄目ですよね?」 「……吸ってないから禁煙持続中なんだよ。水成は一々細かいんだよ……」 「はぁ~……あのですね?」 その時だった俺が見つめていた先に男が姿を現した。 「小言はあとだ。目標が来た」 「了解。どうしますか?」 「確保だ。やれ」 「確保状態は?」 「ったく。こまけぇな……自由だよ。じ・ゆ・う」 「了解」 短くそう言うと水成はツカツカとヒールを鳴らしながら男へと近づいていく。 ややあって男はヒール音で水成に気づいた。が、女と分かると直ぐに視線を外し別段気にかける様子も無くそのまま歩いていく。
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