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八月の暑い土曜日。
盛岡駅前の滝の広場は四十度はあるかという暑さだった。
俺―綾松涼は、唯一の日陰にあるベンチに腰かけていた。
Yシャツが汗で体に張り付く。
扇子で扇いでも、あまり効果はない。
その時、携帯がなった。着信音に設定している、ゆずの『夏色』が流れる。
画面を見ると『綾ちゃん』と表示されていた。
俺は急いで電話に出た。
「もしもし」
『あっ、涼くん!よかった、今休み?』
俺の恋人、水樹綾は、とても明るい。
落ち込むことはないんじゃないかと思うほどだ。
「あぁ、今ならいいけど。」
本当は、休みではない。
が、空いているのには変わりない。
『明日さ~、デートしない?久しぶりに非番だからさ!』
綾は、盛岡中央病院で看護師をしている。
そして、俺は盛岡では有名な印刷会社の営業をしている。
その為、なかなか休みが合わず、デートができないのだ。
そして、明日は俺も休みだ。
「いいね!明日なら俺も休みだ。」
『じゃあ…九時に駅前ね。滝の広場。』
「おぅ、じゃあ、明日な。」
『じゃあね。』
電話を切る。
携帯を閉じ、ポケットに入れる。
その時、誰かに頭をどつかれた。
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