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――転校生というのは、モテるのだろうか?
「川端美雪さん!僕と付き合ってください!」
校舎裏に呼び出された川端美雪は、目の前の少年を置いてきぼりに、そんなことを思った。
まだ桜が散りきる前の季節。彼女がこの新学期から転入して、一週間が経とうとしていた。美雪は、何故自分がこんなに声をかけられるのか、不思議で仕方がなかった。
「あ、あの……」
目の前の少年がしびれを切らせて彼女に声をかける。意識がこちらになかったせいで、随分彼をほったらかしてしまったようだ。美雪は慌てて、彼に笑顔を向ける。
「ごめんなさい。お付き合いはできません」
笑顔とは裏腹の、ストレートなお断り。少年は、ガックリと肩を落とした。
「あの、川端さん。他の人の告白も断ってますよね?」
彼は彼女に尋ね、彼女は素直に頷く。
「はい」
彼女はすでに、三人の男子の告白を断っていた。いつの間にか、その噂も流れているようだ。
「それは、今付き合っている人がいるからなんですか?」
その問いに、彼女は首を振った。
「いえ、今お付き合いしている人はいません」
「それなら、好きな人がいるんですか?」
彼女はまた首を振る。
「それなら、どうして……?」
彼の目が美雪を捉える。
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