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肌寒くなってきた秋。侑李に出会ったの春だった。もうそろそろ1年だから、約束にちょうどいいのかもしれない 「裕翔」 「あぁ薮くん」 ぼーっとしながら歩いているといつの間にか着いてしまった。 「とりあえず座って」 案内された場所に腰を下ろして薮くんが煎れてくれたお茶を一口だけ飲んだ 「まぁ、簡潔に言うと侑李の両親は亡くなっていた」 「…え?」 「侑李をこの施設の前においていったのは親戚の方で、誰も引き取りたくなかったからだったそうだ」 話の内容も切ないのに、なにも知らずに僕の顔を見てニコニコしている侑李の顔を見ているのも辛い 「で、今は…?」 「今も、引き取れる親戚は誰もいない状態。でも里親を望んでる人はいるよ、子供が出来ない夫婦だ」 「じゃあ、もしかしたら…」 「龍太郎は完璧に伊野尾たちが引き取ったけど、一年っていう約束の侑李が」 あまりにも急すぎて受け入れられない現実。涼介と薮くんたちの話ですら耳にはいってこない  
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