月影の幻

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 今朝はいつものように教室に入り、自分の席に座った。  俺の席は廊下側から二番目の列、前からも二番目。 「?」  何故か今日は俺の席の前の席に女子が3人集まっていて、「アタシも見たいなぁ」とか「ホントに居たんだ!」とか楽しそうで、何か盛り上がってる。  中心部の席に座っていたのは吹奏楽部の伊吹さん。まぁ彼女の席だから当たり前だけど。 「おはよう、不知火さん」  今日も彼女は俺に明るく挨拶してくれた。 「よう、何かあったのか?」  盛り上がりの元が気になって聞いてみた。 「……笑わない?」  伊吹さんは少し間を置いてからそう言ってきた。 「笑わない」  俺が即答したのは“大人しい伊吹さんならそんなくだらないことは言わないだろう”と思ったからで。  まさかあんなことを言われるなんて思ってなかった。
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