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『昨日の夜、神様を見たの』
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昨晩、伊吹さんはいつもより塾の帰りが遅くなり、いつもより遅くにコンビニに行って自分の夕飯を買いに行ったらしい。
「~~♪」
伊吹さんが吹奏楽部で練習中の曲を口ずさみながらビニール袋を揺らして歩いていると、ちょうど公園の前の電灯に差し掛かったときに上からふわりふわり、と何かが降ってきて。
目の前に落ちてきたそれを立ち止まって見てみると……真っ黒な羽。
その羽は筋まで真っ黒で、烏の羽にしては柔らかく、触り心地が良かったんだとか。
伊吹さんが上を見ると――――
「!!」
電柱の上に人影があったらしい。
暗くて顔は見えなかったけれど間違いなくそれは人間の形。
一つだけ人間と違ったのは翼の形をした影があったこと。
驚きのあまり伊吹さんは声も出せず、足も動かず、ただ見ていることしかできなくて。
その影が自分を一瞬見たかと思うと、その翼が本物であることを主張するかのように羽ばたき、ばさばさと大きな羽音が聞こえて……その影は飛んで行ってしまった、というのが伊吹さんから聞いた話。
伊吹さんには証拠品の羽まで見せてもらった。
あの柔らかい羽は烏の羽じゃなかったし、作り物とは思えなかった。
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