織田家の時

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結菜「優希様、湯加減はいかがでございますか?」 優希「あぁー…丁度いいっすー…」 結菜「それは良かった!」 優希は深い浴槽に肩までしっかり浸かり、体の疲れを癒していた。 優希(そう言えば俺……、何でこんな所まで来て風呂なんか入ってるんだろう) 湯から自分の腕を出し、優希の目の前にさらした。 ──傷だらけの、腕。 外気に触れ、ヒヤリと体温が奪われていく。 優希(しかも、唯のことまで思い出した……。忘れた事なんてしたくなかったけれど、思い出す事もしたくなかった) 優希はじゃぶ、と、わざとらしく音を立てて腕を湯の中に戻した。じわりと腕が温かくなってゆく。 優希が体の動きを止めて聞き耳をたてたが、物音一つしない。ということは、結菜はどうやらいないようだ。 優希「……はああぁ……」 今度こそ全身の力を抜いた優希は、鼻の下まで湯に浸かった。口から空気を吐いてブクブクと泡を目の前に作って遊んでいた。
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