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結局美咲が、ここ公立柳沢高校に着いたのは10:00。
昼休みには担当教諭にこってりと絞られた。
「あー……ついてない。」
机に突っ伏して溜め息混じりに愚痴を溢す美咲。
身長155cmの小柄な体が、体勢のせいで更に小さく見える。
身長に比例してスタイルも控え目。
学力も中の中。
誉められる点があるとすれば大きめで綺麗に澄んだ目と、同じく綺麗な長い黒髪。
部活は柔道部に所属しているのだが、始めた理由は
「痴漢とかスリとかの不幸には対処出来るようになる。」
という柔道との関連性0の理由である。
そんなこともあってか、部の中での強さもこれまたど真ん中。
強くはないが弱くもない。
見た目はありふれた、ごく普通の高校2年生なのだ。
見た目は。
「おす!美咲っ!今日も相変わらずしけた顔してんねぇ!」
「流石は不幸女王。」
そこに元気の良い女子の声と、冷静な雰囲気の男子の声の二つが美咲にかかる。
元気の良い声の主は、短めの茶髪にやや巻きがかかった、美咲よりやや背が高い女子だった。
その女子は背後から美咲の胸を思い切り鷲掴みにする。
「ひぇあっ!?」
思わず高い声で小さく叫び、顔を赤くする美咲。
「しけた顔してると更に運が逃げるわよー?」
「私は静華と違って不幸の塊だから運とか関係ないの!」
美咲はその女子を静華と呼んだ。
彼女の名は「如月静華(きさらぎ しずか)」という。
成績は常に学年トップを維持する程の秀才、スポーツ万能、所属するバスケ部では部長を務め、家では茶道をたしなみ、誰からも好かれる明朗な性格と抜群の容姿。
完全無欠を体現したような女子だ。
平凡な(ある種非凡と言えるが)美咲とは釣り合わないようだが、お互いに親友として交流している。
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