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「俺は強くなりたい―――。
そう言ったな、ではお前は?良いだろう、お前の道と俺の道がある程度同じ方向性を見ているなら、その程度力を貸そうではないか。だが、生憎、俺はお前の事を露ほども知らない。力の貸しようがない。
お前は何が何でもしたいのだ?」
夢を語る男児の唇はにやけ顔に伴いつり上がる。
「人生を楽しみたい。」
「なんだと?」
「あぁ、嘘じゃないけど嘘みたいな理由だと思われる事は知ってるぜ?」
「じじぃがさ、人生は安心を追求していく物だって言ったんだよ。なるほどと思ったぜ、人が技術を追い求めるのも、己を害する要素を取り除くのだって安心を確定させる為だ。例えば九死に一生を得た人間は正に安堵し命を噛み締める。人生を実感する瞬間だ。」
「なるほどと思った。
だが、享受には至らなかった。
確かに数え切れない程、多種多様な人生の中にそういう人生がある事は理解出来る。じじぃが何十年も生きてきて培った人生観を俺なんかが否定出来る訳が無い。」
「俺はもっと先を見たい。
たとえば『覇王』―――。」
キーワードにピクリと反応を見せるがレイの弁を止める気は無かった。
「あいつは人生に何を見ていたんだろうな?あんな敵を作る様な人生に安心を見いだしていたなんて語らせねぇ、もっと、、、大きな、いや、人生観に優劣も大小も無いんだろうけどよ、もっと面白そうな事だと俺は思う。」
「俺はあいつみたいな独創的な視点で世界を見てみたい。それには人生経験ってのが必要だと思ったから旅に出たし、旅には個性的な仲間が必要だと思ったからお前に会いに来た。単純だろ?解り易さって大事だと思うぜ。」
「小さな。あまりにも矮小たる行動原理だ。格好悪い。」
「ああ、こっからお前の力で格好良くしてくれよ、ロック。」
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