――邂逅――

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「くそっ!!」 深い森の中、先頭を歩くギルド『バッカニア』の団長イゴールが悪態をつくように突然の雷雨でぬかるんだ地面を蹴り上げる。 『バッカニア』は構成員十数名からなる中級ギルドである。決して大きくも無く、ギルドの状況も傾向として『進化』の道を歩めている訳でも無い。魑魅魍魎のギルドに埋もれる存在になろうとしていた。いや、もう既に埋もれているのかもしれない。 イゴールは起伏の無い環境に憂いていたのだ。 元々、貴族の末子に生まれたイゴールには誇りがあり、盗賊まがいの略奪を許容する事は出来なかった。だがしかし、誇りだけで上手くこの世が回るのならば世界はもう少し優しかっただろう。 団員が増えれば出費も増え、金の需要は爆発する。そもそも許す気も無かったが、もし略奪行為を団員に許した所で確かに当座、瞬間的には財政面が緩和されるだろう。 だがしかし、根本的な問題を解決しない限り状態は改善される事はない。 故にギルドの最も優先せし事項は、『信頼と名声』を手に入れる事であった。『信頼』は仕事のリピートに繋がるし『名声』は新しい顧客を手に入れる要素で大事な数値だ。 接続詞は『だから』で続く だから、彼等『バッカニア』は突然の雷雨にさらされようとも歩みを止める事は無いし、だから、彼等『バッカニア』は『そこ』へと向かう。 『暴王』の居城に。 ギルドはその権利と存在を国によって保障されている。極論、国はギルドの上位の組織なのである。それならば『信頼と名声』を勝ち得る最も効率的な方法としては、国の信頼を勝ち取り、国から名声を得る事なのである。少なくともイゴールはそう判断した。 そして今、国にとっての最たる障害とは何だろうか?それを取り除く事こそが最優先事項『信頼と名声』の獲得への指標。そして具体的なアクションこそが――― 何の前触れも規則性無く訪れ、秩序も無く、ただただ理不尽に全てを奪っていく様を、その圧倒的暴力を王国政府に『天災』と形容され、恐れられた者がいた。性別は判らない。年齢も、その可視化した圧倒的な魔力の奔流が正体不明を作り出す。唯一の情報は一人である事。奴は一夜で千人を一人で殺しきるのだ。 人々は恐怖し力の代名詞である『覇王』をなぞり『暴王』と呼ぶ。 ―――そして魑魅魍魎たるギルドは『暴王』討伐に夢を見る。
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